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暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

【メモ】川出・渡辺・柴谷・池田・団

以前紹介した生物記号論の川出由巳へのインタビュー記録がWEBにUPされているのに気がついた。ちょうど震災の直前だ。川出本人のチェックが入っているので、記載に誤りはない。

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生物記号論者・川出由己さんインタビュー (まえがき)
http://stakano.blogspot.com/2011/02/blog-post_4399.html

生物記号論者・川出由己さんインタビュー (1/4)
http://stakano.blogspot.com/2011/03/1.html

生物記号論者・川出由己さんインタビュー (2/4)
http://stakano.blogspot.com/2011/03/24.html

生物記号論者・川出由己さんインタビュー (3/4)
http://stakano.blogspot.com/2011/03/34.html

生物記号論者・川出由己さんインタビュー (4/4)
http://stakano.blogspot.com/2011/03/44.html

面白かったのは次の5点。

(1)川出は渡辺格の弟子筋だったということ。渡辺格と柴谷篤弘は日本の分子生物学の草分けだが、その渡辺の弟子の川出が定年後に柴谷・池田から「構造主義生物学」の影響を受け、郡司ペギオ-幸夫や松野孝一郎との座談会などを経て生物記号論に至っている道筋が何とも興味深い。しかも本人は、自分の生物記号論は郡司とも松野とも違うし、構造主義生物学とも異なるという。

(2)生物記号論を褒めてくれた人物として池田清彦に加え団まりなが入っていること。彼女はいいね。「現代思想」の1994.9月号では養老孟司との「男と女の系統発生」というタイトルだけ観るとキャッチーな対談が収録されていて面白い。著書もいい。生命体の進化の階層を独自に描いている。

(3)記号の次元が、生物にだけあって無生物にはないとは考えず、連続して無生物にも記号の次元が存在すると考えているところ。現役の記号学者では、John Deelyという人が同様の主張をしているそうだ。こんど読んでみよう。記号の次元とは暗黙の次元ということだ。暗黙知の統合の力は上下全階層において働いているはずなのである。

(4)生物記号論の今後の展開について正直に「よくわからない」と告白しているところ。彼にとって生物記号論とは「哲学的なもので、解釈するためのものなんです。機械論的生物学が見出してくる知識にたいして、正当な解釈をし、生物や人間存在を理解する、ということのためには必要なものですが、自分で生物学的な知識を開拓するために、どう役立つのかはわかりません。」と、これは率直(過ぎる)告白だ。そうなのだ、「で?」という疑問を発せざるをえないところがあるのも事実なのである。

(5)最後にインタビュアーがマイケル・ポランニーについて感想を求めているところ。川出は「Science誌に出た有名な論文(1968)には大いに共感します。」と語る。これは日記で紹介した"Life's Irreducible Structure"のことだ。そして「生物の進化というものは、「自由の探求」であると思います。」とも言い切る。これはマイケルとほぼ一致した見解だ。


定年後に新たな分野に取り組み、独力でこれだけ独自の視点と理解で生命を語る川出は現在86歳。こうした尊敬に値する年長者の率直なことばに出会うと癒される。さぁ、自分の研究を進めよう。