暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

近況

最近はクリスマスアプリ以外、ほとんどmixiは使わなくなったなぁ。

フローはtwitterfacebook、思索の整理(ストック)はhatena Diary。

mixiの日記やコミュは、下書き保存もできないしamazonなどの他サイトからの引用機能も貧弱だ。

【近況1.翻訳】
 まだ邦訳がないけれど是非紹介されるべきだと思っている本を、kindle+実物で読み進めている。完訳したいのが3冊ある。

 (1)Creation and Evolution

Creation and Evolution

Creation and Evolution


   マイケルをして「フッサールの後継者」「精神は身体の意味だと看破した先達」と言わしめた、bio-semioticsの創始者であるF.S.Rothschild博士の著書。博士の邦訳は一冊もなく、ユクスキュル
生物から見た世界 (岩波文庫)

生物から見た世界 (岩波文庫)


や、ホフマイヤー
生命記号論―宇宙の意味と表象

生命記号論―宇宙の意味と表象


だけ注目される日本の現状は遅れているといって良い。全ては彼から始まったのだ。

 (2)The Murder of Nikolai Vavilov

The Murder of Nikolai Vavilov: The Story of Stalin's Persecution of One of the Great Scientists of the Twentieth Century

The Murder of Nikolai Vavilov: The Story of Stalin's Persecution of One of the Great Scientists of the Twentieth Century


   マイケルが化学から科学哲学へ転向するきっかけとなったヴァヴィロフの死に関する優れた読み物。ヴァヴィロフはルイセンコに貶められて獄死してしまうのであるが、後成説を唱えるルイセンコに対し正統な遺伝学に基づいた前成説を唱えるヴァヴィロフを科学者のコミュニティのあり方として擁護したマイケル。だが、マイケル自身は後成説的なPersonal Commitmentを主張することになるのは何とも皮肉だ。ヴァヴィロフの生きた時代は帝政から革命を経て共産主義の時代であり、本書はそのあたりもしっかり押さえていて大変に面白い。日本のルイセンコ論争については中村禎里の優れた書籍
日本のルィセンコ論争 (みすずライブラリー)

日本のルィセンコ論争 (みすずライブラリー)


があるが、本書は近代科学史についての大きな貢献だと思う。

 (3)Pattern and Recognition - Human and Mechanical -

Pattern Recognition: Human and Mechanical

Pattern Recognition: Human and Mechanical



   岩波講座「転換期における人間」全10巻の巻頭第1巻「生命とは」の序文で、編集を務める渡辺慧は『いま「生命とは」』という現在読んでも刺激的で網羅的な生命論を展開しているのであるが、その中で何度も引用しているのが本書だ。ちなみに渡辺は栗本先生と同様(!)、やたらと自分の業績を強調する表現が著書に現れる。実際、渡辺の業績はもっと評価されて良いとは思う。本書は晩年ハワイ大学にて教鞭をとっていたときに出版された本だが、初めてマイケルを引用している本でもある。絶対読んでいるくせに日本語著書では一言もマイケルに触れない渡辺慧。心憎い。


【近況2.言語学
 twitterで知り合った言語学の先生が精力的かつ独自にいろいろな翻訳をして(秘密裏に)公開してくれている。やはりきちんと一度は専門書で学ばないとね、ということでエイチソンのテキスト

Understand Linguistics: A Teach Yourself Guide (Teach Yourself: Reference)

Understand Linguistics: A Teach Yourself Guide (Teach Yourself: Reference)


第2章を読み進めた。残りを読むと同時に、ジョン・ライアンズ
言語と言語学

言語と言語学


を読み進めているところだ。言語学者が知りたいのは、あらゆる自然言語は何か共通なものを持っており、他の通信体系はそれを持たない、ということの是非である。最終的には、チョムスキー生成文法)とマイケルについて論を進めたいのだー。


【近況3.類人猿とヒトの言語】
 マイケルのP.K.における言語論はチンパンジーとの比較から始まるのだが、では実際にチンパンジーは言語を解し運用できるのか。ニムの実験を行ったテラスの著書

ニム―手話で語るチンパンジー

ニム―手話で語るチンパンジー


を読むと、手話含めてチンパンーは結局言語をヒトのようには解さず、チョムスキーの主張を裏付ける結果となっている(ちなみに「ニム・チンプスキー」は「ノーム・チョムスキー」をもじってテラスが名付けた)。普段気にすることがない実験チンパンジーの行く末についても「悲劇のチンパンジー」
悲劇のチンパンジー―手話を覚え、脚光を浴び、忘れ去られた彼らの運命 (自然誌選書)

悲劇のチンパンジー―手話を覚え、脚光を浴び、忘れ去られた彼らの運命 (自然誌選書)


は詳しく教えてくれるし、日本の家庭でチンパンジーを育成した様子を的確かつユーモアを交えて報告している「もう一人のわからんちん」

も大変興味深い事例だ。ニムは映画になった
PROJECT NIM [DVD]

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し、「猿の惑星 創世記」
猿の惑星:創世記(ジェネシス) 2枚組ブルーレイ&DVD&デジタルコピー(ブルーレイケース)〔初回生産限定〕 [Blu-ray]

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もヒットした2011年。サル学って、面白いです。

2と3の成果を、mixiコミュで途中になっているP.K.の言語論理解につなげるのだ。

【近況4.The Study of Man】
 優れた翻訳家である別宮貞徳には誤訳悪訳を狩りまくる著書

誤訳、悪訳、欠陥翻訳―ベック剣士の激辛批評

誤訳、悪訳、欠陥翻訳―ベック剣士の激辛批評


をいくつも出しているのであるが、その中にマイケルのThe Study of Manの邦訳(晃洋書房版)
人間の研究

人間の研究


を分析しているものがある。読むと確かにひどい訳で、ハーベスト社版
人間について

人間について


の訳も同様にひどいことがよくわかる。晃洋版v.s.ハーベスト版v.s別宮版v.s.私家版の4種比較をしている最中だ。


【近況5.マイケルの手紙】
 マイミクで院生のペコペコさんがシカゴから持ち帰ったマイケル原資料の数々。実は無理を言ってマイケルの私信を拾っていただけるようお願いしていたのだ。これを入手し、読み、訳していくのが来年の最重要マイテーマ。あー、ワクワクドキドキ。



ということで、皆様も思う存分ご自身の好奇心を満たされますように。

メリー・クリスマス。

良いお年を。