暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

池谷・中田・浅島・マイケル

池谷裕二がResearchMapのインタビューに登場した。

http://researchmap.jp/article/tsunagaru/201106/

著書を数冊読んで、今ひとつ最終的な関心が一致していなくて「ふーーん」という感じだったのだが、今回のインタビューでは結構関心領域が重なって面白く読めた。

3点。

(1)グリア細胞に「も」着目し始めたところ。同じ脳科学者でカリフォルニア大学脳神経学教授+新潟大学脳研究所統合脳機能研究センター長である中田力に接近している。中田はグリア細胞にある「アクアポリン」(ニューロンには存在しない)に焦点を当てて脳のなかの水分子から意識の謎を説明する「脳の渦理論」という独自の理論を打ち立てている。中田はfMRIの権威でもあり、ベストセラー作家の海堂尊が司会をしているTV番組「海堂ラボ」に今晩出演してfMRI黎明期の話などをしてた。とても面白かった。分子生物学者を、すぐに細胞をすりつぶして遺伝子を取り出す「潰し屋」と呼んでいた。「潰し屋」はその細胞がどこにあったか、臓器や脳の構造のどの箇所の細胞なのかを一切気にしない。fMRIをやっている中田は臓器や脳の構造の美しさに魅せられているからとてもそんなことはできないのだという。団まりなも同じことを言っていた。個々の細胞には個性があるのだ。そもそもMRIの目的は「生きているありのままを写しだす」ことにある。

(2)血管に「も」着目し始めたところ。心筋梗塞を患った私は血管や血液にはウルサイ男なのだ(脳梗塞を患った栗本先生のように)www。血管の内皮細胞増殖因子に「アクチビン」があるが、この「アクチビン」の濃度勾配が胚の分化を誘導する(胚のどの箇所が皮膚になりどこが血液になりどこが筋肉になりどこが心臓になるかなど)ことが分かっている。神経系+循環系。今後の著書が楽しみだ。

(3)階層の原理への着目。池谷は「脳の作動原理」を解明したいのだという。今までは「分子を潰して」「神経細胞1個を精密に記述」してきた。ヒトの意識はそうやって分解していくこと=わかることだと認識する癖があるようだ、と。でも「脳の作動原理」はそうした意識の癖に合致していない。分解していっても作動原理=Operational Principleは理解出来ないことに彼は気づいた。これはマイケルの層の理論と整合する。

今週末にResearchMapは大きめのVersionUPをするようだ。コンテンツの一層の充実に期待したい。
http://researchmap.jp/index.php?action=pages_view_main&active_action=bbs_view_main_post&post_id=3847&block_id=70#_70