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暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

ユダヤ人を考える知性

ユダヤ人問題。日本人には、いや少なくとも僕には全くピンとこないこの響き。問題立案の必要性を感じさせないのだ。
日猶同祖論を知ったのは、ビックコミック・スピリッツに連載された漫画だった。
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内容はよく覚えていないし、短期で連載が終了したので人気も出なかったはずだ。けれど、「ユダヤ人」とは何か特殊な使命を負った人々であるらしいという感覚だけは残った。大学でもユダヤ人論はなかった。外大にはユダヤ人について学問的に扱う学科or科目は存在しなかったのだ(今現在もそのようだ)。ForeignStudyを専門とする国内有数の専門大学においてそうであるのだから、私がユダヤ人問題にピンとこないのも当然(?)だ。
19世紀末まで日本に存在しなかったユダヤ人。日露戦争の戦費の約半分を個人的に請け負ったユダヤ人ジェイコブ・シフ。
現在のユダヤ人の大部分を占める民族的起源カザール帝国と、国際資金資本としてのユダヤ陰謀論を詳細に語っているのが、栗本先生のパンサル完結編だ。

パンツを脱いだサル―ヒトは、どうして生きていくのか

パンツを脱いだサル―ヒトは、どうして生きていくのか


しかしこの本では、栗本先生は本来の明晰さを全く失ってしまっている(ように見える)。カザール帝国については、アーサーケストラーの次の書籍をネタ本にしているだけだし。
ユダヤ人とは誰か―第十三支族・カザール王国の謎

ユダヤ人とは誰か―第十三支族・カザール王国の謎


国際資金資本(「金融」機能は果たしていないから「金融資本」とはいいたくないそうだ)や石油メジャーの話については、陰謀論に絡めて「仮に陰謀であるとすればつじつまが合う」とか「私は・・・そう思う(なぜならそれが私の暗黙知の指し示す方向だから)」といった叙述が、こと「ユダヤ人問題」についてのみ全く科学的ではない形で展開されるのだ。自分では陰謀論を慎重に避けているかのように語りながら・・・。
現時点で「ユダヤ人問題」について、最も明晰に何が「わからないか」を語っているのは、気鋭の内田先生だ。
私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)

私家版・ユダヤ文化論 (文春新書)


非ユダヤ人代表としてのサルトルとユダヤ人代表としてのレヴィナスの思弁を比較土台とし、ユダヤ人を規定する「反ユダヤ主義」の思考を語ることで、消去法で結果的にユダヤ人を語る戦略。彼が語るユダヤ人の本性とは、その他の民族・文化における時間遡行のイメージと全く逆転した、ユダヤ教における神と自己の観念が引き寄せる時間遡行が、贄として主体的な「有責性」を率先して選び取らせることで引き起こされるもの、となる(わかりにくですね。内田先生のクリアカットな叙述に直接あたってください)。