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暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

ホモ・サピエンス

パンツを脱いだサル―ヒトは、どうして生きていくのか

パンツを脱いだサル―ヒトは、どうして生きていくのか

本書で栗本先生は人類の起源の説明としてエレイン・モーガンのアクア説を展開したと世間では考えられているし表面上そう読める所も多いが、本筋のネタ本は違う。『意味と生命』のメルロ=ポンティ編でも「知覚の現象学」ばかりを引いておいて本文は「行動の構造」からチラぱくりしているのと同様に、本書でも、引用されているものとは異なるネタ本がある。それがこれ。

はだかの起原―不適者は生きのびる

はだかの起原―不適者は生きのびる

本書で島はアクア説(というか適者生存の自然選択)をタコ殴りのフルボッコし、非常に説得的にヒトの起源を説明している。そして最後255ページからは「パンツをはいたサル」といった趣だ。栗本先生がアクア説における汗腺の意味をぼやかしているのは、島の本書での批判を踏まえてのこと。そして本筋は「不適者が生き残る」ということなのだ。

「進化論」を書き換える

「進化論」を書き換える

この2書に、池田の「エピジェネティカルな形態形成システムの変化」というマイケルも指摘していた大進化の機構が加わると、全体のストーリーがどう展開可能なのか。少し整理しておこう。

(1)1千万年以上前:ラマピテクス:4足歩行、毛皮有り

  アジアやアフリカの森林地帯で生活

(2)670万年前:ラマピテクス

  アファール地峡のダナキル地塁が孤立化

(3)500万年前:アウストラロピテクス:二足歩行、毛皮有り

  ダナキル含むアフリカ一帯、主食は骨髄、「口と手連合仮説」により二足歩行化。

  遺伝子に突然変異は無く、エピジェネティカルな獲得形質(二足歩行)が遺伝的同化を達成

(4)240万年前:ホモ・ハビリス:二足歩行、毛皮有り、石器使用

  孤立し隔離されたダナキルで急速な進化、脱ダナキル

(5)190万年前:ホモ・エレクトゥス:二足歩行、毛皮有り、石器使用

  孤立し隔離されたダナキルで急速な進化、脱ダナキル

(6)32万年前:ネアンデルタール:二足歩行、毛皮有り、石器使用

  (3)の子孫、ヨーロッパほぼ全域と中東

(7)20~10万年前:ホモ・サピエンス:二足歩行、毛皮無(はだか)

  孤立し隔離されたダナキルで急速な進化

  遺伝子に突然変異は無く、外胚葉の発生プロセスがエピジェネティカルに変化

  外胚葉=1)皮膚・2)汗腺・3)口腔喉頭・4)脳だが、それぞれ1)毛無し・2)アポクリン腺の極端な減少・3)言語発話の物理的構造成立・4)脳機能の拡大(高度な学習能力、心的器官の形成)という変化を引き起こし、その生存上の不利を強引にカバーする必要があった。

  はだかに対応して、火・衣類・家を発明

  言語の発明、社会的行動、洞察と予見に基づく行動、過度な攻撃性

  過剰の蕩尽による快感原則、結果としての拡大成長路線

 

(7)の現生人類にいたるまで、火も使えないし毛皮はあるし家も(必要)ない。パンツをはいてまだたった10万年なのだから驚きだ。また、(7)の急速な進化はネオ・ダーウィニズムが言うところの適者生存と自然選択ではない。身体の欠損を補うべく発現された暗黙知の力による創発だ(と言ってしまって良いだろう)。3)の口腔咽頭の変化などは、気管に異物が入って窒息死してしまうような、生存に関わる欠損だ。しかしこの欠損は「言語発話」には適していたのだ。4)と緊密に連動して現生人類は言語体系を構築し、密なコミュニケーションを可能としたのだった。

 

能動的な適応。必死の跳躍。コミットメント。

 

古人類学については、島が「教科書的に使っている」と書いているクラインの次の書籍を読むべきなのだろうな。

The Human Career: Human Biological and Cultural Origins

The Human Career: Human Biological and Cultural Origins