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暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

Lecomte de Nouy

マイケルの"Personal Knowledge"と"The Study of Man"はLecomte de Nouy賞を受賞している。
ルコント・デュ・ヌイ?

  1. 誰?何をした人なの?
  2. マイケルの思想と通じるものがあるのだろうか
  3. フランス人の賞を英米系にねぇ(←どうでもいい話)

と、改めて考えると気になるわけで、2冊ほど取り寄せて読書中。

人間の運命

人間の運命

序章 人間は、これからどのような未来を迎えるのか
第一部 人間とは何か −その科学的研究の方法
 第1章 人間にとって「宇宙」とは何か −物理的な宇宙と精神的な宇宙
 第2章 科学はどこまで人間の「味方」になれるか
 第3章 生命は偶然に誕生したのか ーその確率を考える
 第4章 「生命」の進化の法則と進化の「終点」について
第二部 「生命」はどのように進化したか
 第5章 地球の年齢と古生物の発生について
 第6章 化石は何を語っているのか
 第7章 進化と「適応」のメカニズム
第三部 人間の進化とその運命
 第8章 人間の「進化」の始まり
 第9章 創造する精神
 第10章 「自己改善」の手段としての文明について
 第11章 人間の知性が「本能」を克服するとき
 第12章 迷信の功罪 −動物から人間への飛躍
 第13章 宗教 −自己を高める「努力の価値」を確信するために
 第14章 「神」と人間のあいだで −人間が生来持っている「夢」の実現
 第15章 人間の進歩・幸福に不可欠な「徳育と知育」
 第16、17,18章 新しい「人間の運命」の始まり 

スピリチュアル系のその手の本かと現在の我々からみると訝しくなる内容だが、彼の経歴を知ればそう単純ではないとわかるはずだ。

ルコント・デュ・ヌイは1883年にパリで生まれ、ソルボンヌ大学などで法学士、哲学士、理学士、哲学博士、理学博士の学位を取得し、1951年第一次世界大戦のフランス軍将校として軍病院に勤め所長となる。ここで彼は生体の傷治療プロセスを数学的に表現することに成功する。瘢痕形成の過程を追跡し、皮膚表面の傷が完全に治癒するまでの時間を事前に計算することが可能になり、傷の治癒速度は個々人及び年齢により異なることが判明したのだ。我々は天文学的な惑星の周期や自転から割り出した物理学的な時間で生きているが、それだけでなく生物学的な時間も備えているというわけだ。子供の生物学的時間と大人の生物学的時間、傷の治りの違いの科学的基礎を築いたのがルコント・デュ・ヌイなのである。

進化と適応についても面白い知見を述べている。適応してしまうとそこで進化は止まる。適応がよく出来るということは進化と関係がない、という視点で全進化の流れを見なければならないというのが彼の基本的な態度である。そして人間は「欠陥的存在」であるがゆえに無限の可能性を秘めているのだ。埋葬にヒトとサルの違いを認めたのもルコント・デュ・ヌイが初めて指摘したものだ。

さて、ではマイケルとの共通点とは何か。それは人間の、各人のコミットメント(責任ある選択と関与)を最重要視しているという点につきる。本書をルコント・デュ・ヌイは次の言葉で締めくくる。

神の火花は人間に、自己の内部にのみ存在する。それを軽蔑するのも消し去るのも、あるいは逆に、神とともに働き、神のために努めたいという熱意を示すことによって神へ接近するのも、すべてわれわれ自身が選びとることなのだ。

もう一冊紹介しよう。マイケルの"Knowing and Being"に大変良く似たタイトルだ。

"Between Knowing and Believing"
http://www.amazon.com/Between-knowing-believing-Pierre-Lecomte/dp/B0006BXNRA/ref=sr_1_4?s=books&ie=UTF8&qid=1333442525&sr=1-4

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バゼ−ヌ(Bazaine)が描くミミズがのたくったような表紙や挿絵も独特だが、「人間の運命(1947年)」から17年後の1964年にフランスで出版され1966年に英語に翻訳された本書が面白いのは、テイヤール・ド・シャルダンからの2通の手紙が収録されていることだ。テイヤール・ド・シャルダンといえばイエズス会の司祭かつ北京原人の発掘に関わった科学者。この二人のフランス人はお互いにその影響を認め合っていたのである。

現象としての人間 [新版]

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ニューエイジについてのキリスト教的考察

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つまるところ、ルコント・デュ・ヌイ(も、テイヤール・ド・シャルダンも)は科学と宗教の境界線上の学者であり、マイケルの受賞は社会的に同じ意味を付与されている、ということなのだと思う。