近況その1
7月の異動以来、ほとんどアウトプットができていない。
はぁ・・。
facebookで誕生日のお祝いの言葉をいただいたことだし(?)、近況をば。
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面白そうな本が出る。
- 作者: クリストフ・マラテール,佐藤直樹
- 出版社/メーカー: みすず書房
- 発売日: 2013/01/19
- メディア: 単行本
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amazonの内容紹介によると「本書の元をなす博士論文は学士院奨学金賞とパリ大学総局賞文系部門をダブル受賞した。フランス科学哲学の最前線。」だという。ググっても著者のクリストフ・マラテールについてはよくわからない。でも、マイケル参照は確実だろう。
年明けの出版が楽しみだが、値段もハルし、保険をうっておきたいところ。そこで、こんな書籍を翻訳している訳者ならば同じような問題意識を持ってるはずだとにらんで、東大の佐藤直樹の著書を入手し読んでいる。
エントロピーから読み解く 生物学: めぐりめぐむ わきあがる生命
- 作者: 佐藤直樹
- 出版社/メーカー: 裳華房
- 発売日: 2012/05/26
- メディア: 単行本
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「はじめに」から佐藤の問題意識を紹介しよう。
私は生物学を専門とするが、もともと学生の頃から哲学や思想には特別の関心をもって勉強してきて、いつか、両者を総合しようと準備して来た。本書はこうした生命の基本的かつ統合的な理解をも目指し、生命の理解の仕方や生命科学の教育に、新しい風を吹き込むことができると期待している。
副題の「めぐりめぐむ わきあがる」 は、佐藤が生命を統合的に理解するためのキーワードだ。めぐる=サイクル、めぐむ=与える、わきあがる=創発。下位層の循環的な秩序の勢いから新たな上位層がわきあがるというイメージだ。
地味な文章で知的興奮にはやや欠けるが、引用文献の一番目が清水博「生命を捉えなおす」だったり、エントロピーが物理化学と生命をつなぐ創発のキーだとしているあたりは、もちろんのごとく「意味と生命」を思い出させてくれて、俺的にはグッド。
この訳者なら、冒頭の書籍は購入OKだろう。
========追記 2013.1.11
みすず書房のサイトに冒頭書籍の目次と概要紹介が出た。
http://www.msz.co.jp/news/topics/07742.html
生命の創発を語る書籍の目次レベルで、マイケルが、暗黙知が一言も言及されないとはなぁ。立ち読みして索引見てから買おうかな。。。
<目次>
- 序文
- 第一章 生命とさまざまな生命起源論
1 生命の定義
2 生命の起源とは - 第二章 生命のさまざまな起源論──歴史的にみた問題点
1 生命の起源についての歴史的アプローチ
2 確かに煙はあるが、決定的証拠(スモーキング・ガン)は見つからない
3 不確かな状況証拠
4 生命出現が起きた時間幅は正確にはわからない
5 何度も上書きされて解読困難な生命 - 第三章 生命のさまざまな起源論──物理・化学的にみた問題点
1 物理・化学的アプローチ
2 生物を説明する図式
3 依然として説明できない生命 - 第四章 創発概念の発展の核心をなす生命
1 生物の性質としての創発
2 創発の不遇の時代と再生
3 生命科学における創発の再浮上
4 生命の創発についての現在の問題点 - 第五章 さまざまな形をとる創発
1 創発の哲学的概念
2 イギリスの創発論者たちの考えた創発
3 論理実証主義者たちの考えた創発
4 機能説明的な意味での非還元論としての創発
5 結論 - 第六章 創発と説明
1 水が透明であることは創発的な性質か
2 創発と説明モデル - 第七章 実用主義的な創発
1 還元的な(実用主義的)説明
2 創発の実用主義的な定義
3 水の透明性への適用
4 実用主義的な創発とそのさまざまな側面 - 第八章 われわれの知識の現状に即して考える生命の創発性
1 実用主義的な創発の形式的な条件
2 歴史的なケース
3 物理・化学的なケース - 第九章 生命は将来もずっと創発的であるのか──前生物的な化学的過程と化学進化の検討
1 部分過程における創発
2 前生物的な化学的過程と創発
3 前生物的な化学進化と創発 - 第十章 生命は将来もずっと創発的であるのか──前生物的な自己組織化の検討
1 部分過程における前生物的な自己組織化現象
2 構造的自己組織化と創発──リポソームの場合
3 機能的自己組織化と創発──自己触媒ネットワークの統計的モデル化の場合
4 機能的自己組織化と創発──遺伝子ネットワークのモデル化の場合
5 結論 - 結論
1 実用主義的な創発
2 生命の創発
3 その先にあるものは - 訳者あとがき
引用文献
人名索引