暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

遷移状態理論

ランダムさ、秩序、相互調整、境界条件などマイケルの意図を真に理解するには、一度化学反応論をきちんとやったほうがよいのではと最近つくづく思う。

そこで手っ取り早く購入したのが、

反応速度論

反応速度論

1969年の初版から30年以上現役の大学の教科書だ。

慶伊富長さんといえば、マイケルの『創造的想像力』も翻訳されており、栗本先生編集の『創発暗黙知』の最初の章は慶伊さんの「科学者 マイケル・ポランニー」で始まっている。

創造的想像力 増補版

創造的想像力 増補版


創発の暗黙知―マイケル・ポランニーその哲学と科学

創発の暗黙知―マイケル・ポランニーその哲学と科学


残念なことに2007年9月20日に86歳で逝去されている。『反応速度論 第3版』は2001年、『創造的想像力 増補版』の出版が2007年なので、人生の最後をマイケルの書籍翻訳で終えられたのだと思う。ある種、うらやましい。

この『反応速度論』は100ページ足らずの薄い本なのであるが、パラパラと読み進めると第6章:遷移状態理論の中に「M.Polanyi学派」という囲み記事があり、マイケル(及び弟子達)の化学業績をコンパクトに整理しておられる。

少しだけ引用しよう。

6章で述べた理論のすべてが、ベルリンのカイザーウィルヘルム協会物理化学・電気化学研究所のM.Polanyi研究グループから生まれた。大塚明郎(帰国後東京教育大学に光学研究所創設)、児玉信次郎(京都大学工学部教育に量子論を導入、当時の助教授福井謙一は反応電子論でノーベル化学賞受賞)との希釈炎研究、ベルリン工科大学院生E.Wigner(のち渡米、原子核理論でノーベル物理学賞受賞)との反応量子理論、ついでカリフォルニア大学からの留学生Eyringとポテンシャル曲面論展開を行った。Eyringは帰国してプリンストン大学に赴任し、ポテンシャル曲面を多くの反応に適用しながら活性錯合体理論を打ち立てた。

続けて堀内寿郎、D.D.Eley、M.G.Evans、M.Calvinなど錚々たる面子がマイケルの弟子筋で登場する。

改めて、凄いなマイケル。