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暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

真面目に法理論

クリモト

1983年に全3巻で東京大学出版会から出された『現代法哲学』というシリーズがある。第1巻「法理論」第2巻「法思想」第3巻「実定法の基礎理論」。編者は京都大学を代表する法学者の田中成明と、東京大学を代表する法学者の長尾龍一

各巻に当時の若手研究者による問題提起的論文が10程度寄稿されているのだが、第1巻に栗本先生が「聖俗理論と法」という論文を寄せている(ちなみに本巻には井上達夫も寄稿し「暗黙の規範」とか語っていて面白い)。先生は当時43歳。

現代法哲学 (1) 法理論

現代法哲学 (1) 法理論


編者の田中成明が栗本論文について「はしがき」で紹介しているので、それを以下抜き出します。興味を持たれた方は是非本文に当たってみてください。

栗本慎一郎「聖俗理論と法」は、以上の諸論文と比べて、その問題関心や論調をかなり異にしているが、法の一般理論の従来の在り方自体に反省を迫るものとして、基本的にはこの問題領域(注:社会学・経済学などの社会諸科学の方法や成果をどのような仕方で摂取するか)に属するとみてよいであろう。栗本論文は碧海純一・中村雄二郎両教授の見解を対比しつつ、法学諸分野の基礎的パラダイムを問い直すことなしに分子生物学や動物行動学の成果を学際的に摂取することは不可能ではないかと、近代の論理や成果に対する批判が強まる中で法哲学の近代合理主義的な準拠枠組を相対化し再検討すべきである、と主張する。そして、このような試みの一具体例として、近代社会のノモスとカオスないしノモス・カオス・コスモスという聖俗二元論ないし三元論を顧慮することによって、その分析視角の一面性からの脱却が可能であることを示唆している。実定法や法学的議論を社会全体のなかで統合的視座からとらえなおすべきことを提唱する栗本論文は、道徳や政治の世界全体における正義理念の根拠や限界に注意を喚起する井上論文、強制と合意の法理論的位置づけを社会理論や実践的議論の一般理論を視野に収めながら試みている田中論文などとともに、法哲学的・法律学的思考枠組自体の存立基盤や限界をより広い視野から究明するにあたっての有益な手がかりとなるであろう。