暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

【メモ】Life's Irreducible Structure

『Knowing and Being』最終章として収録されているマイケルの「生命の非還元的な構造」。原書には出典の記載がないが、雑誌Scienceの1968年6月21号に収録されているのがわかる。

http://www.sciencemag.org/content/160/3834/1308.abstract

きちんと被引用論文も明記されていて、21件だ。一番最新の引用論文はW&L大学(しかし、建国の祖であるワシントンと南北戦争の南軍の司令官であるリーの二人の名前を冠するとは、面白い大学だ)の哲学科助教授Charles Lowneyだ。彼はポランニ協会の定期刊行誌であるTADに'Wittgenstein and Polanyi: Metaphysics Reconsidered'という小論を寄せたりしている。面白い。

http://www.missouriwestern.edu/orgs/polanyi/TAD%20WEB%20ARCHIVE/TAD26-1/TAD26-1-fnl-pg19-28-pdf.pdf

もう少し分子生物学直球ど真ん中での被引用論文が増えるといいなぁと思っていて、大和雅之さんに大いに期待している。twitterでの彼のつぶやきを見ると、大変に海外出張が多い方だ。学会絡みが多いようだが。

計算生物学では本論文を引用している日本人論文があって、慶応大学の2006年度「優秀修士論文」となっている。

代数学的手法を用いた海馬シグナル伝達機構の解析』
http://mcarchive.sfc.keio.ac.jp/ekamo/tmpDocRoot/books/sfcac/0302-0000-0591/0302-0000-0591.pdf

大量の分子生物学のデータをコンピュータで処理し、実験科学では再現できないでいる生体現象をある数学的モデルで再現させようという試みで、マイケルの当該論文における「二重制御の原理」を基本的なスタンスの一つに据えている。いいよね、この方向性。

マイケルの本論文と同じタイトルを冠し、オーストラリアの植物学者であるAlexander Williamsが書いた論文が、2007年に出た 'Life’s irreducible structure―Part 1: autopoiesis' だ。

http://creation.com/lifes-irreducible-structure-part-1-autopoiesis

オートポイエーシスに階層構造を見、その構造は非還元的だという点でマイケルの思想と一致するという面白い論点を出してきている。ただ彼は進化説よりも創造説に近しのが残念といえば残念なのだが。

『Knowing and Being』はMarjorie Greneの手によるものだが、彼女がやはり編集して1975年に出版したのが『Topics in the Philosophy of Biology』だ。amazonでは221ドルという高値がついている。

http://www.amazon.com/Topics-Philosophy-Biology-Studies-Science/dp/902770595X/ref=sr_1_1?ie=UTF8&s=books&qid=1305387372&sr=1-1

5部18の論文からなっている本書の第2部「還元」に、K.F.Schaffnerの論文「ワトソン−クリックモデルと還元主義」とともにマイケルの当該論文が収録されている。K.F.Schaffnerは当時シカゴ大学の助教授で、現在はピッツバーグ大学の哲学科の教授だ。

http://www.pitt.edu/~kfs/

著書も面白そう。『Discovery and Explanation in Biology and Medicine』

http://www.amazon.co.jp/Discovery-Explanation-Medicine-Conceptual-Foundations/dp/0226735923/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1305392219&sr=1-1-catcorr