暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

Relations Between Sciences

'The ontology of commitment ... can be expanded by acknowledging the achievements of other living beings. This is biology.'

昨日から読み始めた『The logic of P.K.』。まずはMarjorie Greneの論文"The logic of Biology"からにすることにした。マージョリー・グリーンといえば名著『Knowing and Being』の編者。彼女が語る「生物学の論理」はマイケルのP.K.の上述の引用から始まる。すなわち、

「主体的遂行(commitment)の存在論を拡張していくと(ヒト以外の)他の生物にも達成を看て取ることになる。それが生物学という学問なのだ。」

※commitmentを「掛かり合い」とか訳すのは止めたいな。オースティンの「行為遂行」(performative)に近い気もするが、なかなか旨い訳語がみつからない。

グリーンは本論でこのマイケルの叙述をもっと明確に(elucidate)補強することを試みている。The ontology of commitmentとは一体なんなのか。手始めに彼はPantin教授の著作を引く。

C.F.A.Pantin教授。あまり著名ではないこの教授について調べだしたらグリーンの本論を読み進めるのが止まってしまった。amazonだと著作が1冊みつかる。『Relations Between Sciences』だ。Google Booksで中身が拝見できるようなので目次を確認。面白い。

Chapter 1
The restricted and the unrestricted sciences
Chapter 2
The features of the natural world
Chapter 3
Living systems and natural selection
Chapter 4
The classification of object and phenomena
Chapter 5
Methods in the unrestricted sciences

グリーンが引いているのは第4章の「分類」に関するPantin教授の論説だ。ヒトが何事かを分類する認知の仕方にマイケルがいうところのpersonalなcommitmentの働きを見ている(はずだ)。そしてこの認知の仕組みがあらゆる知識のベースに不可欠に存在するという話になっている(はずだ、と思う。読んでないけど)。

同じような「分類」の考えを示しているのが渡邊慧であり「みにくいアヒルの子の定理」だし、池田清彦も『分類という思想』で似た考えを展開している。分類すること、世の中を分節化することの不思議。改めて興味深い話題なのだ。

Pantin教授は動物学、特に無脊椎動物を専門としているのだが、地質学や物理学にも明るかったようだ。第1章では、物理学は「制限のある科学」だが、生物学は「制限のない科学」だと主張する。このあたりが、グリーンの本論「生物学の論理」に繋がりマイケルのontology of commitmentに繋がるはずだという確信めいた予感を抱きつつ、今日は寝よう。