暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

過去と未来をつなげる

ヒカルの碁 23 (ジャンプ・コミックス)

ヒカルの碁 23 (ジャンプ・コミックス)


本因坊秀策に取り付いていた霊「sai」が21世紀の小学生に再び取り付いて碁をやらせる、というお話。小畑健が画のレベルを2つぐらい上げた作品にもなったその最終巻。

すでに成仏した「sai」=本因坊秀策を軽んじる発言をする韓国人棋士に反発するヒカルは、「なぜ秀策にこだわり碁を打つのか」との問いにこう答える。「遠い過去と遠い未来をつなぐため」と。そしてそれは「人はみな誰でもそうなんだ」と続いて終わる。
ヒカルは「sai」が成仏してしまったことに責を感じ、その祟り・呪いを一身に背負う。自分のこれからの碁(=遠い将来)に「sai」の存在(=遠い過去)を現出させることでしか祓い清めが永遠に終わらない感覚。そうした強迫観念の中で、連続的で持続的な時間(歴史)の流れの中の自分の役割を前景化していく。
先週父親になった。遺伝。遠い過去と遠い未来を繋ぎ結びつける自分の存在。結節点。別に子供が居なくとも、周辺の人間関係の中で自分が他人に与えた影響が(あるとすれば)波紋のように広がっていく感覚。過去から受けついだ遺産に多少ともオリジナルな何モノかを付与した上で、次の世代に贈られる唄・絵・文学・選択した行動の結果。言祝と祝福。
光あれ。