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暗黙の焦点 別宅。

Michael Polanyiに捧げる研鑽の日々。

怪異なるモノの捉え方

寺田寅彦随筆集 (第2巻) (岩波文庫)

寺田寅彦随筆集 (第2巻) (岩波文庫)

理系的な考え方について高校時代の僕に決定的な影響を与えた同級生のT君。彼が好んで読んでいたのが寺田寅彦だった。真似して学校の図書館で借りて読んでみると、理系の学者の癖に随筆を書かせるとやたらに面白い。理系と文系の見事な両立。それぞれに対し妙なコンプレックスのない健全な精神。京大医学部へ進み、今は確か精神科を専門としているはずのT君。どうしているだろうか。

この随筆集第二巻は結構面白くて、僕が大学時代に足にしていた都電の混雑について分析し、「都電の乗客の大多数は、無意識とはいえ自ら求めて満員電車を選んで乗っている」との結論を導いたりしている。その中のひとつが「怪異考」。

高知の「孕みのジャン」と濃尾の「ギバ」。この二つの伝承的な怪異について、自然現象である「地鳴り」と「空中放電」が引き起こすとの仮説を立てて考察している。科学的な態度としてこれは、大槻教授が火の玉を解明する方法と同じ。ここで僕は、科学では捉えきれないものがあるなどと言いたい訳では全くない。そうではなく、ほかにもう二種類ほど怪異なるモノを捉える視点があるなぁと思ったのだ。

ひとつは民俗学あるいは文化人類学的な「他者」というカタチで捉える方法だ。異質な価値観をもつ共同体同士が接触すると、お互いがお互いを怪異(鬼とか)とみなしてしまう、というアレ。もうひとつは京極堂シリーズで展開される心の闇。本来共同体レベルで創出されたはずの怪異が、個人同士のレベルでも相手を怪異(魍魎とか女郎蜘蛛)として捉えて、捕らえられ離れられない。

自然現象から対人関係まで、僕らの周りは本当に怪異なことだらけ、だ。京極先生、「邪魅の雫」お待ちしてます。